ベン・シャーン展　〜アトリエに残されたメッセージ〜
Ben Shahn - Massage left in his atelier

　ベン・シャーン（1898〜1969年）は、鋭い観察眼を社会で起きた様々な問題に向け、多くの人々から共鳴されるようなメッセージを持った作品を終生発表し続けました。彼はその過程で多くの〈それ自体メッセージ性の強い〉エスキース類を残しています。今回の展覧会では、そうした多くのエスキース類を中心に構成し、ベン・シャーンの業績や造形思考の根源を探る機会になればと思います。従来、私たちがあまり接する機会のないエスキース、ドローイング、スケッチの類は、たとえるならば、作品制作の汗水にあたる部分です。完成された作品が高い評価を得る一方で、いつも忘れられて来たように思われます。しかし、20世紀以降の美術は、それまでの様式中心に見られた美術に対して、より強い個性を持ってきました。そうした点において、途中過程の汗水を知ることも、作品の生成を知る上で、一つの大切な要素になっており、これからの新しい芸術活動の展望への布石になるのではないでしょうか。
多摩美術大学付属美術館館長　山邊知行